十二国記特有の語、特有の意味を持つ語、諺などを集めました。


■用語集

安闔日
あんこうじつ
年に四度、春分・夏至・秋分・冬至の日に黄海の入口である四令門が一度ずつ開く日。それぞれ令乾門、令坤門、令巽門、令艮門。
雲海
うんかい
天地を分ける、空の上にある海。浅く見えるが、潜っても底にはとどかない。
海客
かいきゃく
蝕によって、蓬莱から流されてきた者。東の国に流れ着く。
界身
かいしん
いわゆる銀行。他国他都市間の界身には座と呼ばれる強力な組織があり、座に参加している界身の烙款らっかん(焼き印)があれば、同じく座に参加している界身のどこでも金銭などを受け取ることが可能。
懐達
かいたつ
〈慶〉達王を懐かしむ、の意。短命の女王が長く続き、長い治世を敷いた達王にちなんで、男王を望むという意味。裏に、女王を疎んじる意味も含まれている。
仮王
かおう
王が天命を失いたおれた後、新王が登極するまでの間に立つ仮の王。多くは冢宰がなり、仮の朝廷である仮朝を開く。
架戟
かげき
冬器を売る官許の武器商。店の入口に目印として官許の札と戟ほこを架けておくため。
家生
かせい
家族として主人に養われる下男下女。衣食住の保障はあるが、給金はもらえない。
割旌
かっせい
浮民の別名。家生や黄朱の民は、逃げることのないように旌券を割らされるため。
偽王
ぎおう
王の天命がいまだ尽きないままに、大逆によって登遐した際、立つ王。多く王を討った者がなり、偽朝を開く。
給田
きゅうでん
数えの二十歳で、国から土地をもらうこと。この、国がくれる土地を公地、許可をもらって自分で開墾した土地を自地という。給田は正月にいっせいに行われる。
玉泉
ぎょくせん
宝玉を産出する泉。種になる玉を沈めておくと、それが育って巨大な結晶になる。同様に金泉・銀泉もある。
許配
きょはい
結婚相手を紹介する職業。給田の時、同じ籍に入れば同じ土地に振り分けられるため、望む土地に移ることができる。
黄海
こうかい
世界の中央に位置する、人外の土地。妖魔妖獣の住処で、荒涼とした砂漠や荒地、樹海が広がる。
黄朱の民
こうしゅのたみ
《同:黄朱、黄民、朱民、朱旌》定住せず、芸や商売をしたりしながら諸国をまわる浮民。もともとは、旌券に仮のものであることを示す朱線が入っていることから朱旌と呼ぶが、それが転じて朱民、また、「黄海の民」と言う意味から黄民とも呼ぶ。
剛氏
ごうし
昇山する者の護衛を生業とする黄朱の民。
鴻慈
こうじ
〈戴〉泰王が路木に願って生った荊柏という植物。もとは黄海の植物。実を乾かすと炭の代わりになる。戴国首都鴻基にいる王の慈しみ、という意でこう呼ぶ。
高岫
こうしゅう
国境のこと。各国の境にある山を高岫山と呼ぶことから。
国氏
こくし
王と麒麟、王の近親者が持つ、国名と同じ音の一字。景(慶東国)、延(雁州国)など。国氏を冠して、王ならば「景王」、麒麟ならば「景麒」「景麟」などと号される。天の条理に背いた場合、国氏が変わることもある。(例:斎→采、代→泰)
呉剛門
ごごうもん
月の呪力を借り、地上に開く世界と蓬莱、崑崙を結ぶ門。呪具、もしくは妖魔、上位の仙、麒麟だけが開くことができる。
五山
ござん
黄海の中央にある五つの山。中央に崇高山、東西南北をそれぞれ蓬山、華山、霍山、恒山。男仙女神・女仙の住処。崇山には天帝が住み、華山には西王母が住むと言われている。
金剛山
こんごうざん
黄海をとりまく東西南北の山脈。どんな生き物も越えることが出来ないと言われる。
崑崙
こんろん
漢とも。世界の陰にあると言われる伝説の国。中国のこと。
山客
さんきゃく
蝕によって、崑崙から流されてきた者。金剛山の麓に辿り着く。
失道
しつどう
王の道に悖る行為によって、麒麟だけが罹る病。王の天命が尽きたことの証とされる。王が改心するか、もしくは王が自ら死ねば治る。麒麟が斃れてから実際に死亡するまでは数か月から一年ほどかかり、王が斃れるまでにはさらに数か月から一年ほどの猶予がある。
射儀
しゃぎ
祝い事や賓客があった時の祭礼時、弓を射る儀式。鳥に見立てた陶製の的を射る。宴席でのものを燕射といい、国家の重大な祭祀吉礼に際して催される射儀を、特に大射と言う。
折伏
しゃくぶく
麒麟が妖魔を僕に下すこと。僕となった妖魔は以後麒麟の使令として働き、死後は麒麟の死骸を食べ、その力を手に入れる。
捨身木
しゃしんぼく
蓬山にある、麒麟の生る木。根にはその麒麟の女怪が生り、一日で孵る。
朱氏
しゅし
猟尸師のこと。人に雇われず生活するために朱民の筆頭とされている。(→黄朱の民)
朱旌
しゅせい
朱線の入った仮の旌券。または、旅芸人のこと。(→黄朱の民)
生国
しょうこく
麒麟にとっての自分の国。実際にそこで生まれるわけではないがこう呼ぶ。「―に下る」麒麟が王を選び、蓬山を下りて自国で暮らすこと。
昇山
しょうざん
自らが王たらんと望む者が蓬山に登って麒麟に会い、天意を諮ること。
杖身
じょうしん
護衛のこと。

しょく
気が乱れる嵐のようなもの。世界と蓬莱、崑崙が交じり合う現象。これによって海客や山客がやってきたり、卵果が流されたりする。黄海の中や雲海の上には起こらない。
瑞雲
ずいうん
新王が登極するときにあらわれる雲。その実は、王を乗せた玄武が蓬山から王宮へ渡るときに残す足跡。
仙伯
せんぱく
五山の女仙男仙、自力昇仙の仙。飛仙の中でも伯位の仙なので、こう呼ばれる。自力昇仙の飛仙には呼称に老の字がつく。
沮墨
そぼく
黥面の刑に用いられる墨。十年ほどで消える。
胎果
たいか
卵果が蝕によって蓬莱や崑崙に流され、そこで女の胎内に辿りつき誕生した者。
胎殻
たいかく
胎果が蓬莱で生まれるとき、胎内でかぶせられる肉の殻。蓬莱の両親に似せる為にかぶせられる。
地綱
ちこう
天綱に対し、王が発布する法。天綱に違反して発布することはできない。州侯・領主はこれに違反して税を徴集できない。
地仙
ちせん
王から仙籍を賜り、王の下で働く仙人。←→飛仙
覿面の罪
てきめんのつみ
王と麒麟が数日のうちに斃れるほどの罪。他国に侵入すること。
轍囲の盾
てついのたて
〈戴北部〉または、白綿の盾。驍宗が轍囲攻略にあたって盾に白綿を貼らせたことから。誠意の証、という意で用いられる。
天綱
てんこう
《同:太綱、施予綱》天の摂理を記した世界の決まり。ひどく教条的に働く。
転変
てんぺん
麒麟が、人型から獣型になること。
冬器
とうき
冬官府で造られる、特殊な呪を施した武器。妖魔や仙を斬ることができる。
二声
にせい
白雉。王宮の梧桐宮に棲み、生涯で二回しか鳴かないことから言う。一声が登極、二声が崩御。二声を末声とも言う。二声を鳴いた白雉は即刻死に、その足は次王登極まで御璽の代わりをする。
女怪
にょかい
麒麟の乳母。麒麟の卵果が生った同じ日に捨身木の根に生り、一日で孵る。白という姓を持ち、たくさんの獣が混じっているほどよい女怪とされる。
白陽
はくよう
晴天時に雲海の下の雲が切れ、地上の雪の照り返しによって雲上で起こる現象。すべてのものが淡く光る霧に包まれたように見える。
飛仙
ひせん
自分で請願を立てて昇仙したり、王に任ぜられても特に王に使えていない者。
百稼
ひゃっか
黄朱の主食。さまざまな穀物を煎ったものを、ごく細かく挽いたもの。水を加えて煮ると六倍ほどに増える。これだけで生きていけると言われる。
飄風の王
ひょうふうのおう
最初の昇山者の中から出た王。疾風のように登極した王、の意。「飄風は朝を終えず」とも言い、傑物かその逆のどちらか、と言われる。
蓬山公
ほうざんこう
蓬山の主である麒麟を指す尊称。(麒麟が蓬山にいる間のみ)
鵬雛
ほうすう
〈黄朱〉鵬、とも。昇山のとき、王になるであろう人物。
鵬翼に乗る
ほうよくにのる
〈黄朱〉鵬雛を含んで昇山の旅をすること。危険が確実に軽減する。鵬を失った場合、反動が一気に来るらしい。
蓬莱
ほうらい
倭、倭国とも。世界の果てにあると言われる伝説の国。日本のこと。どんな苦しみも悲嘆もない、夢のような神仙の国と言われている。
保翠院
ほすいいん
〈奏〉荒民を救済する施設。奏国公主文姫がその長・大翠をつとめる。
満甕石
まんおうせき
黄海で採れる真っ白な石。甕いっぱいの汚水を清水にかえることができる。使い終わると黒緑色に変色し、二度は使えない。
鳴蝕
めいしょく
月の呪力を借りずに麒麟が起こす、小規模の蝕。麒麟の悲鳴が招く蝕と言われる。
野木
やぼく
山野にあり、獣や鳥、草や木の種が生る。水の中には魚の生る木もある。黄海では見た者はいなく、黄海には野木はないとされている。
卵果
らんか
里木に生る、子どもが入った黄色い果実。親が里木に帯を結んで祈ると実り、十月十日で熟す。親でないともぐことができない。
里木
りぼく
里にひとつあり、家畜や子を願う者はこれに帯を結んで祈る。この木の下ではどんな生き物も殺生をしない。1日が鶏や鴨などの鳥、2日が狗、3日が羊や山羊、4日が猪や豚、5日が牛、6日が馬、7日と9日以降が人。家畜はひと月で孵る。
凌雲山
りょううんざん
山頂が雲海上に出た山。王宮、州城はこの山頂にある。多くは禁苑。宮殿や陵墓、飛仙の洞府などに用いられる。
猟尸師
りょうしし
黄海に入って妖獣を生け捕ることを生業とする者。仲間の屍を猟ってくる者、という意味で、朱氏を揶揄する言葉。
猟木師
りょうぼくし
野木に生る新しい植物を探すことを生業とする浮民。
路木
ろぼく
王宮内部にある、国の基となる里木。王の子や、新しい穀物などが生る。新しい穀物は8日に、王だけが願うことができる。路木に実れば、次の年に一斉に国中に卵果がつく。




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