▼100万HIT記念12のお題

「あのね、僕の生まれた蓬莱では、お祝いにお花をあげるんです」


 


おかげさまで「十二国記データベース」も100万HITを迎えました。
その記念として日記で記念のお題を展開しておりました。

自選の「十二国記っぽい言葉」を12個挙げまして、それから連想した場面や映像を描いていくというものでした。
描き方とかいろいろ変えてみたり試行錯誤が楽しかったですよ。

1.誓約

「国がほしいと言え。おれを臣に迎えると。お前が期待を背負っているというなら、おれが国を背負っている」(『東の海神 西の滄海』)
 

このシーンを描きたかったから一番初めを「誓約」にしたようなものです。(あとの11は考えてませんでしたが)
六太の葛藤と決意、尚隆の後悔と責任感が読んでいると身に染みてくる「東の海神 西の滄海」は、私は個人的に一番好きなのですが、ここの二人のやりとりは双方のその思いの全てが滲み出ていて、何度も何度も読み返したシーンの一つです。
2.宝重
屈みこんで手を伸ばしても逃げない。金の鬣を撫でると目を閉じた。(『月の影 影の海』下)
 

しんと静まった石牢の中にひっそりと体躯を伏せる神聖な獣。ここのシーン、景麒が喋るまでは聞こえる音も少なく、なんとなく重厚で神聖な雰囲気がして好きです。相手が獣だと陽子は慎みを忘れるのか(笑)、結構ふたりの距離が近いのも主従って感じでなんとなく好きです。

厚塗りっぽい描き方をはじめてやってみましたが、とてもお気に入りな感じに仕上がりました。珠の色を綺麗に綺麗に!と念じて塗りました。
3.安闔日
押し黙って頑丘が歩く脇を、珠晶は小走りに歩いていた。頑丘と違い、珠晶の足は軽い。(『図南の翼』)
 

アジアの市場のような、雑多な街並みを目指しました。この街は、ほとんど安闔日だけ(それも一年に一度だけ)にぎわうのでしょうね。安闔日のためだけにある街ですもんね。
でも、もう少しごちゃごちゃさせてみたかったです。
4.騎獣
「こらこら」
「手を出さないほうがいい。咬まれたらお嬢ちゃんの腕なんか、なくなってしまうぞ」(『図南の翼』)
 

騎獣といいつつ騎獣がおりません。言葉からの場面連想なのでこういうこともありつつ。
利広の登場シーンです。シリーズ中で出番はそれほど多くはないのに、数多の乙女のハートをがっちり鷲づかみにしたインパクト大の登場シーンです。
顔は笑ってるのに腹の中では油断なく二つも三つも先のことを考えている、そんなイメージの彼。主役にはなれないけれど、物凄く印象深いキャラですね。
5.太綱
「……おい、こら、おっさん」
 大綱の一は、天下はこれ仁道をもって治むべし、という著名な一文である。(『東の海神 西の滄海』)
 

十二国記は割りとお堅い文体・口調だと思うのですが、こういうふっと力が抜けるシーンがあるのがいいですね。二以降をどんなふうにアレンジするのか気になる……。

6.使令
広瀬が瞠目するより早く、周囲の砂が沸騰する。沸き立ち噴き上がり、そこから二つの影が躍り出た。群れと広瀬達の――高里の間に降り立った白と赤の一対。(『魔性の子』)
 

気づけば唯一の泰麒になってしまいましたが、ちょっと外れて『魔性の子』から。元が元なので絵自体もホラーチックです。
「白と赤の一対」という表現が良いです。個人的には、泰麒にはもっと使令をどんどん増やして欲しいなあとも思うのですが、この白と赤のコンビがあまりにも対として話的に完璧な気がするので、他の使令が入り込む余地がないかなあとも思ったりします。
7.失道
「嘘だわ。何もかも嘘。……夢を見せてくれると仰ったのに」(『華胥』)
 

「失道」という言葉からこの采麟しか思いつきませんでした。12個の中で最もスムーズに出来上がったお題です。選択の余地がなかったとも言う……。
8.官
「戴に新王が登極したのは、いまから七年前の秋のことです。――新王の名は乍驍宗」
 淡々とした声が室内に響いた。(『黄昏の岸 暁の天』)
 

「官」と言えば、雁の三人、浩瀚、月渓。ここでは浩瀚を。ちょっと……リベンジしたいですこの浩瀚。もうちょっとうるわしいイメージが……。難産だったお題のひとつです。
9.邂逅
細い糸を撒いたように雨が降る。(『月の影 影の海』)
 

わくわくする言葉です「邂逅」。「邂逅」は「東の海神 西の滄海」のテーマのひとつだと思うのですが、ここは、どうしてもこのシーンがかきたくなったのです。本当は陽子はこんな道のど真ん中に倒れているのではないのですが、浮かんできた構図が、「雨にけぶって先が見通せないような林の中の道」という感じだったので仕方ありません!
水溜りの具合がうまくかけた気がします。お気に入りにかけた気がするものの一つです。
10.里木
黄海の守護者、犬狼真君。真君は玉京の天帝、諸神に嘆願して里木の枝を十二得て、黄朱の民にそれを与えた。(『図南の翼』)
 
どのシーンを描こうか、難産だったものの一つです。これまでにけっこう陽子を描いてしまったので、楽俊と里木を見るシーンはためらわれましたし(しかもすでに挿絵があるし)、結局小説中にはないイメージイラストになってしまいました。ま、いろんな人をかくってことでいいかな……。
真君が真君となるに至った経緯が知りたいです。
11.民
――郷城に敵襲。(『風の万里 黎明の空』)
 

『風の万里 黎明の空』のあとがき(WH版)で小野主上が、行間でばたばた人が死んでいる、これを全部書いていたら横幅よりも厚い本になってしまう、的なことを仰っていらっしゃいましたが、この物語は、そういう、人ひとりひとりが生きているのが感じられるところがすばらしいのだと思います。(それを実際にやってのけたのが『屍鬼』だという気もしますが……)
本当は蘭玉をかこうとしていたのですが、ふと思いついたらかけてしまったのでできあがったものです。そういう意味では、最短の出来です。
12.登極
最後はどういうものにしようかなあ、と漠然と考えていて、わりとすんなり構図が決まりました。そしてそれがほぼそのままの形で完成した、私としてはわりと珍しい出来です。いろいろ候補を考えた末に結局違うものができあがる、というのが珍しくないので。
陽子をかこう、ということ以外は考えなかったです。『即位』だったら即位式をかいたかもしれませんが、『登極』は階段のイメージです。極みに登る、なので、そのまま。




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