十二国記に頻出する、衣服や家具などの字書です。
部類別に提示してあります。
『月影』『風海』は、それぞれ陽子と泰麒の視点で書かれているので参考文献から省きました。
主に特別な読みをするものを集めましたが、日本語にないものならば、漢字通りの読みをするものでも載せたものもあります。
  ※これらはおそらく、全て中国語の用語であり、どうやって使い分けるかは中国語に根拠があることと思います。
  ※備考の欄は、漢和辞典などで調べたものもありますが、作中でどう使い分けられているか、使い分けられている状況や場面場所を鑑み、あくまでも推測して記したものです。正確な使い分けを知りたい方は中国文化の資料などを見れば載っていると思います。
  ※これらは用語ですので、十二国記中では、実物、実際のもの「そのもの」を示したいときに用いると考えます。慣用句的なものなど、例えば「まくらもと」にはわざわざ「靠枕もと」とは書きません。(そこまでやったら書き過ぎだと感じますし……)

※参考辞書:新字源(角川書店)



■装身具

部 類 読 み 表 記 備  考
衣類 うすもの 羅衫
うわぎ 比甲

背心
上着
「うわぎ」「がいとう」の読みに正確な使い分けはない。表記はその形態や素材による違いであり、場面場面で様々な読みを用いている。
 比甲―本文に「羊皮の比甲」とあるので皮素材?
 襖―「わたいれ、両わきのあいた上着」(新字源)
 背心―?
 褞袍―「ぬのこ。どてら」(新字源)←……?
 旗袍―?
 裘―「獣類の毛皮で作った服」(新字源)

「きもの」は単に「着るもの」の意味で使われていることが多い。「背子」「大袖」は用途としては上着のようである。

他にも「うわぎ」は「袍」や「長袍」など様々な字が当てられている。「一番上に着るもの」で「うわぎ」である。
がいとう 褞袍(うわぎ・わたいれ)
旗袍
かわごろも
きもの 背子(うわがけ)
大袖
襦裙(じゅくん)
くつ

 かわぐつ
革昔

 鞜
「革昔」(←漢字がないのでこれで1字と考えてください)は「底が二重になったくつ」(新字源)。主に王が履いているので、豪華で立派な靴。「履」は字の通り「履くもの」という一般的な言い方であろう。「鞜」は粗末な庶民の履くもの。
ころも 王の着る礼装の、一番上に着るもの。
こん 「ももひき。したばかま」(新字源)←……? 多分、よろいなどを付けるときなどに穿く、丈夫なズボンのようなものだと思われる。
しっこ 膝袴 すねあて。
じゅばん 小衫 「衫」…「ひとえの短い衣、そでなしのじゅばん、はだぎ」(新字源)おそらく、うすい下着のようなものであろう。
ねまき 被衫 「被」で「ねまき」の意味があるので、パジャマのこと。
のらぎ 袍子(ほうし) 「貧しいものが着る袍」の意味で「のらぎ」としている。
はんこ 半袴 丈の短い袴。最下層の衣服。
ひとえ 単衫 単仕立の薄い着物?
ぼろ 褐衣
襤褸
「褐衣」…「あらいそまつな衣服。また、それを着た者」(新字源)ものごいの着るもの。
「襤褸」…「ぼろのきもの」(新字源)
装飾品 おび 珠帯 字義から見て、珠かざりのついた帯。
おびだま 玉佩 「玉のおびもの」(新字源)?????わからん!
字義を考えると、腰におびる飾り物でしょう……。
かざり 珠金 珠と金の装飾品……?
かなぐ 帯頭 帯についた金具。
かたかけ 長巾 字義はただの長い布。
かんざし 歩揺

花釵

簪釵
形態や素材によって表記の使い分けがされている。
 歩揺―「婦人の髪かざりの名。歩くと揺れるからいう」(新字源)
 簪―1本足の髪かざり
 釵―「婦人の髪にさす2本足の装飾品」(新字源)
簪と釵は1本足か2本足かの違いのようだ。
くびかざり 連珠
はなかざり 花鈿 「鈿」―「かんざし。造花のかんざし」(新字源)
ひれ 霞披
披巾
肩にかける飾りの布。
ぼうし 氈帽  毛織物の帽子。
みみかざり 耳墜
耳環
耳墜―耳に下げる飾り。
耳環―輪状の耳飾り。


■建造物

部 類 読 み 表 記 備  考
(家屋内)建物の名称 あずまや 四阿
路亭
おもや 正房
主楼
正房―主に里家、一般的な民家の母屋に使われている
主楼―宮や役所、大きな屋敷の母屋に使われている
すまい 居院
たかどの 阿閣
たてもの 堂屋(むね)
はなれ 廂房
(家屋内)部屋の名称 いま 起居
おおひろま 花庁
きゃくしつ 客房 「きゃくしつ」は客用寝室、「きゃくま」は応接間、の意味。
きゃくま 客堂
客庁
しょくどう 飯庁
飯堂
飯庁―高級宿の食堂
飯堂―一般的な小さな宿の食堂
しょさい 書房
しんしつ 臥室 臥室―寝るための部屋
牀榻―牀を置いた小部屋のような寝所
しょうとう 牀榻(ねま)
へや  房間
房室
堂室
房間―里家、小さな民家、宿などの、小さく粗末な部屋
房室―房間よりはランクが上。大きな宿や少し豪華な部屋
堂室―主に、王宮内の部屋。房間、房室が個室的な意味に使われているのに対して、広間、客間など広い部屋のこと
ひろま
正堂
下堂
前庁
基本となるのは「堂」の字。家の表部分。客間や広間。

 下堂―大きな宿に使われている。数階建てのため、階下にある広間の意味であろう

(家屋内)その他 いりぐち・とぐち
いりぐち
大門
框窓
大門―民家など家の南東にある門。出入り口。
框窓―建物の入り口
かいろう


 ろうか
走廊
走馬廊
回廊
 廊屋
ていえん 園林
なかにわ 院子
庭院
院子―里家、宿、民家などの中庭
庭院―王宮の中庭
まえにわ 前院
(屋外) あばらや 草堂
茅軒
(屋外)店など さいばんしょ 蔽獄
ぶきや 架戟
戚幟
架戟―冬器商
戚幟―一般の武器商
みんか 民居
やくしょ  官府
府邸
府第
府城
官府―州府、里府などをひっくるめて一般的に「役所」というときに使われる
府邸〜府城―具体的に役所という場所を示す場合。「府邸」は里府など、「府城」は城状になった県府や郷府など、「府第」はその中でも一般的な字で、県府や郷府などや王宮内の各官府にも使われる
やしき 館第
やどや 舎館
宿館
(屋外)道・塀・門など おおどおり 広途
大経緯
広途―単に「広い道」の意味
大経緯―大緯大経と、特定する場合
かこい 隔壁
囲墻
隔壁―隔(郭)壁のこと
囲墻―城壁の内側にあり、郷城などの内城をとりまく壁または墓地などを囲む壁?
照壁―なんらかの絵画や装飾が施された壁?
墻壁―民家や里家、廟などを囲む、一般的に壁のこと
擁壁―墻壁よりも薄い、殿や廟などを隔てる壁?
かべ 照壁
へい 墻壁
擁壁
みち
もん 里閭
門闕
宗闕
花垂門
里閭―里にある唯一の門
門闕―一般的な門のこと
宗闕―?地門について使われている
花垂門―豪華な宿にある装飾のついた門
ろじ 串風路
(屋外)隔壁内の部分 つめしょ 敵楼 敵楼―要所に設けられた、小さな石造りの建物。
戦棚―矢などを防ぐ大きな楯。
箭楼―各門の上にある何層にもなった楼。
角楼―城壁の四隅にある見張り場。
ぼうぎょへき 戦棚
みはりば 箭楼
坐候楼
やぐら 角楼

「建物内」ということを表現する言葉には、「室」「房」「堂」「庁」などの字があり、それぞれ意味するものが違う。
「室」「房」が裏、主に臥室や個室などを表すのに対し、「堂」「庁」は表部分を意味する。「堂」が建物内部分、「庁」は建物全体を意味していると思われる。


■日用品

部 類 読 み 表 記 備  考
日用品 おんじゃく 釿婆子
さいふ 財嚢
ひばち 火炉・火鉢
てぬぐい 手巾
ふとん
 かけぶとん
衾褥
字構成的に「衾ふすま」と「褥しとね」なので、「かけ布団と敷き布団」という意味。
まくら 靠枕
ゆたんぽ 温婆子
ゆのみ 茶杯
湯呑み
「茶杯」は正式な茶器、「湯呑み」はマグカップ程度の意味。
家具 かけじく 堂福
かざりだな 供案
こしかけ 床几
しきもの 綺筵
佳氈
綺筵―竹製、または敷物の総称
佳氈―毛織物の敷物
しんだい
臥牀(ねどこ)
牀―幄と天蓋をそなえた臥牀
臥牀―ベッド
すだれ 珠簾
つくえ 卓子
小卓
大卓
方卓
書卓
石案
形や用途による表記の違いである。
「書卓」は仕事机、「石案」は院子など屋外に置かれたもの。
ながいす
ふだ 対聯 詩を書いた対のふだ。掛け軸のように飾るもの
食べ物 しるもの 湯菜
やさい 蔬菜
武器 なげやり 標槍
ぶき 戈剣
冬器
ぼうぐ
ぼうぐぶき
甲器
甲兵
よろい 甲冑
皮甲


■その他

部類 読み 表記 備考
いしゃ 瘍医 「医者」の表記もあり
おいはぎ 草寇
ごろつき 匪賊
ごえい 小臣
しゅじん 家公(だんな・さま)
はかもり 墓士・墓大夫
ものごい 花子
もんばん 門卒
門衛
閽人
門卒―国境や役所、王宮などの門についた、おそらく軍所属の兵士
門衛―民家や普通の門を守る役目の者
閽人―王宮などで取次ぎをする役目の者
ゆうじょ 花娘
はか 冢墓
えしゃく 拱手
しけん 選挙
すいせん 選挙・推挙




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